危険な頭痛を見逃さない
頭痛は非常にありふれた疾患で、90%以上の人が一生に一度は頭痛を経験すると言われています。
また日本での慢性頭痛患者は4000万人と言われています。
頭痛は大きく二つに分けることが出来ます。
頭痛が症状の主体となる一次性頭痛と、他の病気が原因で頭が痛くなる二次性頭痛です。
片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛が代表的な一次性頭痛で、二次性頭痛にはくも膜下出血、脳梗塞、脳出血などの脳卒中や脳動脈解離、髄膜炎、血管炎、脳腫瘍などの重篤な疾患があげられます。
片頭痛は日本人全体の8.4%が持っており、そのうち74%の人が頭痛中に寝込むなど、日常生活に支障をきたしています。
一方で医療機関へ受診する割合は30%と決して多くなく、無治療であったり、市販の痛み止めでしのいでいる方も少なくありません。
このように命に関わらない一次性頭痛であっても、身体・精神的な負担が大きく、また日本全体では年間6000億円の損失が発生しているとされ、社会・経済的な損失も無視できません。
日常診療で出会うのは一次性頭痛が圧倒的に多いですが、その頭痛が二次性頭痛ではないのか?もしくはいつもの一次性頭痛に二次性頭痛が隠れてないか?を常に念頭に置く必要があります。
頭痛の治療・予防は日々進歩しておりますが、一方で鎮痛薬を頻回に飲むことで頭痛がひどくなる薬物乱用頭痛も大きな問題になっています。
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目次[▼表示]
危険な頭痛の特徴
- 鈍器で殴られたような、非常に激しい頭痛
- 今までで最悪の頭痛
- 突然始まり、痛みのピークがすぐ来る頭痛
- どんどんひどくなる頭痛
- 体の麻痺やしゃべりにくさなどの神経症状を伴う頭痛
- 発熱や意識障害を伴う頭痛
- 5歳以下もしくは50歳以上で始まった頭痛
- 物が二重に見えたり、視野が狭くなったり、目の痛みを伴う頭痛
一次性頭痛と二次性頭痛
頭痛は大きく分けて2種類あります。
1つは頭痛そのものが症状として現れるもので、「一次性頭痛」と言います。
もう1つは頭痛を起こす原因があって、結果的に頭痛が引き起こされているもので、「二次性頭痛」と言います。
一次性頭痛
・片頭痛
片頭痛の有病率は8.4%で、特に30代女性では20%に達します。
また、中学生の有病率は4.8%で、幅広い年齢層で片頭痛が認められます。
片頭痛は頭痛発作を繰り返す疾患で、典型的には片側のズキズキとした頭痛が4時間~3日間程度続きます。
日常生活に支障が出ることが多く、家事動作や移動などで頭痛が悪化し、発作中は寝込んでしまうこともあります。
頭痛以外に嘔気があったり、大きな音や眩しい光を不快に感じることもあります。
片頭痛には頭痛発作の前に5分~20分程度の前兆といわれる神経症状を伴う場合があります。
視覚的な前兆が典型的で、視野の一部が欠けたり、ギラギラとまぶしく感じたりします。
・緊張型頭痛
緊張型頭痛は15歳以上の日本人20%程度が経験すると言われ、最も多い一次性頭痛と考えられています。
両側性で締め付けられるような頭痛が、30分から長いと7日ほど続きます。
日常生活に与える影響はそれほど強くなく、寝込んでしまうようなことはあまりありません。
肩こりや首の痛みなど、頭周囲の筋肉に痛みを伴うという特徴があります。
・三叉神経・自律神経性頭痛(群発頭痛)
顔や口、鼻の内部あたりの感覚を司る神経を三叉神経と呼び、この神経が活性化されることで起こる頭痛の総称で、代表的なものには群発頭痛があります。
群発頭痛は片側の頭痛発作と眼の結膜充血、流涙、鼻水などの自律神経症状を伴います。
頭痛の持続は15分から180分程度ですが、一次性頭痛の中で最も痛いと言われています。
また1カ月から2か月間毎日1回(多くは夜間)は頭痛が生じ、それが半年から3年程度の期間を置いてまた繰り返すことから、群発頭痛の名が付いています。
二次性頭痛
二次性頭痛は他の病気に伴って、頭痛が生じるものを言います。
二次性頭痛を引き起こす疾患には緊急性が高く、命に関わるものが多いため、一次性頭痛なのか、二次性頭痛なのか、もしくはその両方なのかを正確に判断することが非常に重要です。
もっとも注意しなくてはならない病気は、「くも膜下出血」です。
脳卒中のひとつで、多くは脳の太い血管に出来る脳動脈瘤が破裂することで発症します。
痛みは人生最悪と表現され「バットで頭部を殴られたように」突然の激しい痛みが生じますが、中にはそれほど強い痛みを訴えず、歩いて来院する人もいます。
他にも脳内の血管が詰まると脳梗塞、破れると脳出血、裂けると動脈解離となり、それぞれ強い頭痛を生じることがあります。
また、脳の周りを覆う髄膜が感染を起こすと髄膜炎となり、病原体が脳にまで達すると脳炎となります。
重症度は原因となる微生物によって異なりますが、特に細菌性髄膜炎では肺炎球菌など病原性の高い細菌が感染することで、頭痛・発熱・意識障害が急速に出現し、現代において致死率の高い疾患であるといわれています。
側頭動脈炎は50歳以上で発症し、こめかみを中心とした痛みを感じます。
原因は浅側頭動脈の炎症で、ステロイドが効く場合が多いですが、眼に行く動脈が閉塞することで失明に至る場合もあります。
その他「緑内障発作」では目の痛み、頭痛、吐き気、かすみ目を認め、早期に診断・治療をしないと失明する可能性もあります。
また頭痛に対して鎮痛薬を頻回に飲むことによって、頭痛がひどくなったり、新たに出現したりすることがあり、それを薬物乱用頭痛と呼びます。
月に10日以上の薬の服用が、薬物乱用頭痛の一つの目安になります。
頭痛診断のための検査
まずはどのような症状か問診で確認し、頭痛のタイプを推定します。
問診だけで診断に至る場合もありますが、通常初回の頭痛の場合は、
二次性頭痛を除外するためにいくつかの検査を行います。
頭部CT | くも膜下出血や脳梗塞、脳腫瘍などが疑われた場合は頭部画像検査に進みます。 頭部CTは頭蓋内の変化を検出する優れた検査で、短時間で終わるため最初に行われることが多いです。 特にくも膜下出血や脳出血は早期から異常を発見しやすいため、CTは診断に有用であるといわれています。 一方で発症して6時間以内の早期脳梗塞や少量のくも膜下出血では異常が明らかにならないこともあり、その際はMRIなどが必要になります。 |
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頭部MRI・MRA | MRIは磁力を利用して脳を画像化する検査です。 細かい病変や早期の脳梗塞も検出が可能で、複数の撮影法を組み合わせることで、病変の構成成分も推測することができます。 また、MRAは脳血流を画像化することで、脳血管の狭窄・閉塞・解離や血管の奇形、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤を見つけることができます。 一方で検査時間が15-30分程度かかり、体内にペースメーカーなどの磁性体がある場合は撮影できません。 また、検査可能な施設が限られるので、当院の場合は近隣の高度医療施設に依頼しています。 |
血液検査 | 血液検査はさまざまな疾患で行われますが、髄膜炎・脳炎や側頭動脈炎では体内での炎症反応を反映する白血球、C反応性蛋白(CRP)、血沈などが上昇します。 その他脳梗塞や脳動脈解離では体内の血栓傾向を反映して、凝固マーカーが上昇することもあります。 また、頭痛の直接の原因ではありませんが、糖尿病や脂質異常症を長期に放置すると脳卒中を引き起こすことがあるため、血糖や脂質などの採血項目は日々の生活習慣管理という意味で重要です。 |
腰椎穿刺 | 腰椎の間に細長い針を刺して、髄液を抜き取り検査します。 髄液は脳の周囲を覆う液体で、脳を衝撃から保護していますが、髄膜炎・脳炎では髄液内に微生物や白血球が出現するため、髄液検査が診断に有用です。 また、頭部CTやMRIでも分からない少量のくも膜下出血が検出できる場合もあります。 |
頭痛の治療・予防
・急性期治療
二次性頭痛であれば高次の医療機関での治療が必要な場合が多く、その場合速やかに紹介・搬送します。
諸検査の結果、一次性頭痛と診断されれば、まずは症状を和らげるための治療を行います。
一次性頭痛の中で重症度が高く、日常生活への支障が大きいのは片頭痛です。
片頭痛にはトリプタン製剤という、即効性・有効性の高い薬剤があり、それらは内服以外にも注射や点鼻などでも利用可能です。
その他一般的な鎮痛薬や制吐薬も使用します。
緊張型頭痛ではトリプタンは使用せず、鎮痛薬や筋緊張を取る筋弛緩薬などを使用します。
・再発予防
ストレスの多い生活や疲れ、睡眠の過不足、食事を抜くこと、運動不足、喫煙・飲酒などが頭痛の誘因になるといわれています。
全てを避けるのは困難であっても、まずは可能な限り軽減することで頭痛の再発予防を試みます。
それでも頭痛発作が月に2回以上ある場合では予防薬を検討します。予防薬には抗てんかん薬や抗うつ薬、降圧薬などがあり、効果や副作用を見ながら調整します。
頭痛薬の使い過ぎで起きる薬物乱用頭痛を防ぐためにも、頭痛予防は大切になります。
・片頭痛の新規治療薬
近年、片頭痛発作の発生にカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が重要な役割を果たしていることがわかってきました。
令和3年4月に発売となった抗CGRP抗体や抗CGRP受容体抗体薬は、定期的な注射が必要ですが、CGRPシグナル伝達を遮断することで、片頭痛の発作頻度を減らす予防薬として使用します。
またディタンとゲパントはCGRP放出を抑制する一方で、トリプタン製剤で問題になる血管収縮作用は持っておらず、心血管の危険因子を持つ場合でも利用可能です。
日本においては令和4年6月からディタン系薬剤が新たに片頭痛急性期治療薬として使用可能になりました。
頭痛は多くの人が経験する一方で、その重症度には個人差が大きく、頭痛で寝込んでしまうようなことが理解されにくい場合もあります。
近年頭痛の原因・メカニズムが次々と明らかになり、新たな治療・予防薬が世に出るようになっています。
またつらい片頭痛は年齢を重ねることで改善することが多いとされています。
生活リズム、適度な睡眠・運動など見直せるものは見直し、時に治療薬の力を借りながら、頭痛に悩まされることのない生活を目指しましょう。
提携している医療機関
当クリニックは、下記医療機関と緊密な診療連携を結んでいます。
入院や精密な検査が必要と判断いたしましたらご紹介させていただきます。
- 岐阜大学医学部附属病院
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- 岐阜ハートセンター
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